叶う瞬間はごく平凡

ずっと結婚したがってて結婚した働く女の日記

適齢期にモーニングアフターピル飲んで思うこと。

自慢するようなことではないのだけれど、過去に2回、モーニングアフターピルを飲んだことがある。

モーニングアフターピルとは、避妊に失敗したとき、72時間以内に飲めば、
妊娠することを防ぐことができる薬。

日本では婦人科に行かないと処方してもらえない上に、自費で買わなければいけない。
わたしの行っているクリニックでは、
吐き気の副作用があって2回飲む5000円か、副作用も少なく認可されている15000円か選べる。


そもそも、どうしてそんな事態になるの?ってかんじですよね。
2回とも、脱げたのが原因。相手は別。

1回目は20代半ばのころ。産むことなんて想像できないし、妊娠したのではないか、と怖くて、一刻も早く婦人科に行きたかった。
そもそもこの彼氏は、つけるのを嫌がっていて、早々に「ピル、飲んだら?」と、進めてくるようなヤツだった。
「ピル、飲んだら?」というのは、低用量ピルを飲んだらどうか、という意味で、
低用量ピルとは、妊娠しないためや、生理前のPMSがひどいときに婦人科から処方されて飲むもので、毎日決まった時間に飲んで1ヶ月2500~3000円する。(これも実費)

そんこんなで、「彼氏の快楽のためにピル飲むのなんておかしな話でしょ…。ってか高いし…。」と思ってたので、飲まずにつけて避妊していた。

失敗の事態が起こったとき、彼は言った。
「ね、飲んでおけばよかったでしょう?」

長い時間待たされて、説明をうけ、モーニングアフターピルをもらった。
同じような効果で15000円か5000円だなんて馬鹿らしいと思った。
5000円を自分で選んで飲んだ。
ついでに低用量ピルももらうことにした。
血栓症など他の病気があると飲めないので検査をします」と言われ、
採血などして、結果16000円くらい支払った。

「いくら?」と彼は言った。
金額を伝えて、彼がお札を出したとき、わたしは言った
「今回は2人の事故だから、半分で、いいよ。」
モーニングアフターピル代をワリカンにした。


低用量ピルも、「マーベロン」という種類のものを、はじめの3ヶ月くらいは婦人科でもらって飲んでいたけれど、まぁ、高い。それに、とても混んでいた。

彼は「輸入すれば安いよ」と言って、
慣れたかんじで、マーベロン個人輸入してくれた。
前の女にもそうやってたんだな、とすぐにわかった。
わたしはそれから何年か、彼から支給される、
シンガポールからきたマーベロンを飲んでいた。


いろいろあって、
その人とは別れた。


マーベロン、どうしようかな、と思った。

正直、低用量ピル(マーベロン)を飲むことには抵抗があるものの、
生理の日がはっきりわかったり、
旅行やイベントに合わせてずらすことができたりして、とても便利だった。
生理がなくなるわけじゃないけれど、超不順だった自分には
不機嫌や落ち込みの原因がほぼ全てホルモンのせいだったとわかって、
「性格じゃないんだ…!」と自信を持てた。

彼氏がいなくても、
自分で、ネットからマーベロン個人輸入することにした。


しばらくして、
2回目にアフターピルを飲むことになったのは20代後半。
それから、新しいパートナーができた。
その人は心から信頼できる人だったし、
そのへんは私以上にキチンとした人だった。
だから、「妊娠の心配もないかな」と思い、
毎日飲む、海外のマーベロンも不自然に感じて、飲むのをやめた。

 

やめて1ヶ月くらいして、避妊に失敗した。
なんとなく、直感で「大丈夫でしょ」と思った。

妊娠する気がしなかったし、したらしたで、もういいや、と思っていた。
だってもう、アラサーだし、適齢期だし、
「このハプニングはチャンスか運命だわ、賭けだ!」
なんて思ってた。

「大丈夫と」思ったのは、失敗の程度がそんなだったってのもある。


1度目のアフターピルのときは「妊娠が怖い」だったけれど、いまは「どうにでもなれ」という、流れに任せたい気持ちがあった。

だけど、彼氏に「薬をもらいに行って欲しい」と言われた。

本当に嫌だった。
そもそも、モーニングアフターピルは、1ヶ月かけて低用量ピルでその周期をいじくれるようなものを、たった数十時間でホルモンを操作して妊娠しないようにする薬。そりゃぁ、もう不自然なことに、今のわたしには思えた。
それに、前回飲んだ時も副作用が出たし、それ以上にいろいろ嫌な思いもした。

「また、飲まなきゃいけないの?」

とにかくイヤだ、イヤだと言い続けた。
彼と前の人は別人なのに。
まず、めんどくさかった。会社を遅刻して、クリニックへ行き、先生にアホみたいに「失敗しました」と告げて、もらう。そして、気持ち悪くなりながら会社にいくのが想像できた。
「俺も行く」と言ったけど、そんな生産性のないことはイヤだったので、優しさだけもらって、断った。

「15000円の方、飲んで欲しい。俺払うし。負担や不満がただでさえそっちにあるのに、せめて副作用がない方」と、言った。
どうしても飲むという選択肢しかないことが、わたしには悲しかった。

妊娠しちゃって、早く結婚したいとか、
彼氏を試したいとか、そんな気持ちはもう数年前に捨ててた。

そんな自分勝手な感情ではなくて、
「これでできたらおめでたいなぁ」なんて、
ハッピーなハプニングとして捉えてる自分がいた。

「本能」っていう表現が、近い。


わたしは「もしできてたら、ハプニング枠でとらえて、これからのこと考える。」
「できて、考えて、どうしても産めないってなったら堕ろす。」
なんて話もした。
彼は「そうなったら、もっと体に負担がかかる。」
「仕事も楽しくなってきたって、言ってたでしょ?」
「覚悟はね、できているし、いなくなったりもしないよ。
でも、ちゃんと…、準備できてからがいい」と言った。

どうしても、スルーすることを許してもらえなかった。
薬を飲むしかなかった。

彼の意見を無視してまで、貫くことはできなかった。
彼に後悔が残って、仲良しではなくなったのでは
わたしのイメージする「幸せ」と遠ざかる。

「考えとく」と言って、
駅でバイバイした。

 

朝が来て、
会社に「偏頭痛で遅れる」とウソの連絡して、
病院に行く支度をした。

「どうしても行かなきゃダメ?」
とLINEする。

「本当にごめん」
と返事がきた。

 

わたしはいつまで産めるんだろう。

もし、この先、
この人が言う、「準備」が整って、子どもを望んで、妊活することになったとき、
なかなか授からなくて悩んだとき、
この日のことを悔やむだろうか。


この世界の片隅に』に出てきた台詞が浮かぶ。
「過ぎた事 選ばんかった道

みな覚めた夢と変わりやせんな」

 

 

わたしは、この、出来事を、薬1錠飲んで、何事もなかったように過ぎ去るのはちがう気がした。
「気持ち悪い思いをしよう。めまいやふらつきが出て、1日仕事がおろそかになっても、長い人生でそんな日もあったさって、思いたいわ。」

彼は15000円払うと言った。

 


そうだ!


「選ばんかった道」を10000円で買おう!

と思った。


自分では買わないものを買ってやろう、と思った。

 


クリニックで順番がきた。
前とは違う病院で、先生は女性。
「昨日の○時に失敗したから、モーニングアフターピルをください」と小声で言った。
「あら、そうなのね。時間内だから、大丈夫ね。」と先生は言った。
15000円は副作用が少ないこと、5000円は半数の人に吐き気が出ること。薬の説明をうけて、注意書きをもらい、同意書にサインした。
その場で薬をもらった。

診察室を出たとき、ホッとしてる自分がいた。
安心しているじゃないか………!
流れに身を任せたくて、さんざんゴネてたのに、
結局薬をもらって安堵するなんて、自分にはまだ早かったのか………!?
いろんな気持ちが交錯した。

病院を出て、水を買って、9:45モーニングアフターピルを飲んだ。

20分経つと、ふわふわしたような、軽いめまいがきた。

そのまま仕事にいって、
喉からくる弱い吐き気みたいなのが続きながら、デスクワークをした。
おなかもすいて、お昼も食べた。

夕方、取引先さんとの打ち合わせに行ったのだけど、
16:30頃から猛烈にきもちわるくなってきた。
ペットボトルに両手を重ね、
考えているふりをして、
自分のなかで起こっている、吐き気をみつめていた。
これが「選ばんかった道だ!」「これが不自然の代償!」と、味わってみた。


それから仕事が終わって、
まぁ、なかなかの気持ち悪さでしたが、
吐くまではいかない程度だったので、
「選ばんかった道」を買いに行かねば………!
と勇んだ。

ルミネのジュエリーコーナーをうろうろした。
少女趣味だけど、「小指にはめると願いごとが叶う」ことでおなじみの
ピンキーリングを買うことに決めた。

予算が10,000円なので、
ほぼ選択肢もなく、
めっちゃ気に入ったデザインでもないけれど、
丁寧に接客してもらってうれしかったので、
ピンキーリングを買った。

人生で初めて買ったジュエリー。

 

これを、みて、触るたびに思い出そう。
選ばなかった道だけど、

「きっと良い道に続いているわ」と。

乙女をねじふせられないアラサーの、
デリケートな失敗。

 

ピンキーリングのもうひとつの意味は

「今よりもっと仲良くなれる」。

彼がいろんな角度から、自分のことを想ってくれているのを知って、
うれしいような、悲しいような
秋の日を、
過ごした。

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