オペ室へ行くと、緊急で院内じゅうから集められたスタッフさんが迎えてくれた
「よくがんばったね!」「あとは身を任せて!」「もうすぐ赤ちゃんに会えるよ!」と肩を抱いてくれた。
気を失いかけで、無反応なわたし。
ストレッチャーに寝転がれるか聞かれて、
寝転がる。
わーっと服を脱がされ、手術台に乗せる時、
重かったのでしょう。
ドクターから「うらああああ!」みたいな声が漏れる。ごめん…ドクター…。
「はいチクッとしますよー」
麻酔が打たれる。なにも痛くない。それより陣痛がくる!
もう意識が飛びそう…!
でもここで飛んだら赤ちゃんの声が聞けないじゃないか!
助産師さんに保冷剤をおなか、首、おなか、と当てられて「冷たいですか?」と聞かれる。麻酔の効きを確認してる。
よくわからない。返事ができない。
ドクターから「首から下へ順に当てて聞かないと答えられないでしょう!」とお叱りを受ける助産師さん。
こええ。
冷たかったのでうなずく。
おなかあたりは、感覚がよくわからない。
麻酔が効いてるようだ。
いつ切られたのか、どんな会話してたのかこの辺は覚えてないのだけど、
気がついたら「アーーー!!!」と元気そうな赤ちゃんの泣き声と、その場に居た人みんなの歓声が聞こえた。
同時にメガネのドクターの「背ぇ、高っか!」という声も。
「本当にお腹の中にいたんだ、お腹の中から生まれてきた。
私と彼の赤ちゃんが。
泣いている。
大きな声をあげてきっと元気だ。」
声を聞いただけで、子どもみたいにワンワン声を出して泣いた。すごい勢いで泣いた。
赤ちゃんと初めて会った。
黒くてキレイな目でこっちをじっと見てた。
わたしは0.04の視力で、メガネもどっかいっちゃってから、よく見えないけど
「本当に生まれてきてくれありがとう!」と思ってまた泣いた。
不妊治療してたときから、ずっと会いたかった。
わたしと大好きな人との赤ちゃん。
なんて可愛いの。
帝王切開だったから、カンガルーケアと呼ばれる、抱っこができなかった。でもいいの。となりに来てくれた。
赤ちゃんは一旦、助産師さんが連れていった。
感動に浸りつつ、手術は終盤へ。
どうもお腹を閉じているらしい。
また意識がフワーッと遠のきそうになる中で、
ドクター2人が
「いやあ、新しい縫合の仕方を勉強会で見てきてね」
「本当ですか?!」みたいな勤勉で軽快なドクタートークが始まり、
師長さんに「まだ最中ですよ!」と注意を受ける2人を耳にしたところで、
すううーッと意識が遠のいていった。
すごいスピードで圧ソックスを履かされ、
血栓防止のマッサージ機も足につけられ、パジャマも着せてもらった。
……ブルブルっ!!
震える。全身がガクガクブルブルする。
ベッド硬い。幅狭い。落ちる…!
まだオペ室のようだ。
夫がいつの間にか隣にいた。
赤ちゃんも。
夫が手を握ってくれた。
おつかれさま、みたいなことを、言ってくれた気がする。
赤ちゃんは、黒いおめめでこちらをジッ…と見ていた。
意識が朦朧として、安心感と一緒にまた眠ってしまった。